久しぶりにマカヴォイさん出演作を鑑賞!ずっと気になっていた、アンジーとの共演作です。現状に辟易している男が、ひょんなことから殺し屋として教育され、生き生きしてくるお話。机の前に座るだけのために出勤しているような感じのウェスリー(マカヴォイさん)、嫌みな上司、調子のいい同僚、セfレみたいな恋人。ぼんやりした、特に面白くもない生活だったであろうところから、物語は急展開。いつものスーパーで突然目の前に現れた初対面の女性から自分の父親、生後七日で自分のもとから姿を消した父親のことを聞かされて……あれよあれよという間にすさまじい銃撃戦からのカーチェイス!この展開から、明かされるウェスリーの父親についての事実から、まったく荒唐無稽なのにすっかり引き込まれてしまいました。漫画原作だから何でもありな部分もありましょうが、車ってこんな動きできるの?!というアクションを畳みかけられて、もう目をぱちくり。速度を落とすことなく思い切りハンドルを切って縮み上がったウェスリーを助手席に回収したり、並走車を横合いから飛び越えて天井から撃殺したり、消える魔球に並ぶテクニックと言えるでしょうか、曲がる弾道を実演したり、実車にこだわったというだけあって迫力も説得力もあって、ピタゴラスイッチを見ているかのような驚きと感動を覚えます。
しかもアンジーはすごくカッコいいし、その隣に“いたって普通”のマカヴォイさんが座ってあわあわしているし、だからどこかで彼に感情移入して、自分がこんなことに巻き込まれたらどうしようなどと考えてしまったのかもしれません。意気地のない序盤から、父の影を追うように殺し屋として成長してゆく、コントラストっていうかグラデーションがとにかくすごいので、アクションで度肝を抜かれてからもずっと目を離すことができませんでした。機織り機の中を素早く動いている部品をつかみ取るのに集中を高めるときや、クロスと対峙したとき、ある種の極限状態でまわりがしんとする中、研ぎ澄まされた顔つきになる場面では、その青い目に吸い込まれそうになります。磨いてきた殺人能力と真実を知らされなかったために、終盤はウェスリーにとっては望まない展開だったかも知れないけれど、着地点だけ見たら望んだ変化をしたことになるのか。指名手配の貼紙によくウォンテッドって書くけれど、それのほかにも、ウェスリーの望み的な意味合いがありそうだなと思いました。それにしても最後のあの表情、かっこよすぎやしませんか。ずるい(笑)。
以降ネタバレですが、この殺しに来ていたとばかり思っていたけれど本当は守ろうとしていた、というのと、最終的にその人と同じ生き方をするというの、どこかで見たことがある気がしているけれど思い出せません。ウェスリーが住まいから出てきたときに、クロスの潜んでる窓辺がある建物が映るので、彼が物語の終盤になってようやく知ることになる真実が、序盤で示唆されているのですね。ずっと近くにいるよ、ということが。危ないところに住んでるなって思っていたら、oh papa……
スーパーマーケットでの銃撃戦で、フォックス(アンジー)が眉間にしわを寄せているのが新鮮でした。いつも涼しい顔している気がしていたから。こんなふうに性差を越えた高い能力と、割り切った性格のためか、あまり女性らしいかわいらしさとかは見えないのだけれど、動転したウェスリーを通してあげるときの体の寄せ方とか、そのときの表情とか、とても凄腕の殺し屋には見えないくらいかわいかった!壮絶な人生を歩んできたフォックスの最後の行動は、あぁそうきたかと思ったけれど、彼女の信念とかを鑑みれば納得の選択。技をうまく印象的に見せていて、芸術的にも見えてしまったのでした。最期の瞬間まで浮かべている微笑みが、彼女の覚悟の大きさとか、積んできたものの重さを語っているような気がします。
エンドロールでびっくりしたのが、音楽担当がダニー・エルフマンだったこと。主題歌のビートの効いた感じや、『Love Runs Out』(OneRepublicの曲)を思い出すボーカルが、これまでに聞いたことのあるエルフマンの曲とは結びつかなくて、でもひとつこれは間違いなく彼っぽい旋律だと思うものがあって納得もしたのですが、いやぁ驚いた。こんなにかっこいい曲も作るのですね!