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舞台・映画などの鑑賞記、感動をそのままに。
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「バリー・リンドン」
これも発表会の研究として。貴族やそれ相応の人たちの“凛とした”佇まいや目の感じを見たくて借りました。マイフェア以降、「ゴスフォード・パーク」やら「日の名残り」やら「ダウントンアビー」やら、階下の人ばかり見ていたので、新鮮な世界でした(笑)。

身分という後ろ盾と、それなりの教養と矜恃が香る“凛とした”雰囲気は本人の心持ちに因るのだと、成り上がりのレドモンドを見て感じました。策謀も熱情も全て飲み込んで、知っているけど何事もない様子で居ようとする、内面と外面の間に介在する後ろめたさのようなものは、妙に色っぽい。この点で、終盤、バリー親子追放の画策を聞いているラント牧師の表情が、身の置き場の複雑さを語り、思わずオォッと身を乗り出したのであります。リンドン公爵夫人の佇まいは言わずもがな!人形のように目が澄んで大きいので、感情の機微が際立ちます。恐ろしいのは、いたいけな子供が大人と同じ目をしていること。この世界にいると、本当の無邪気ではいられないのかも。

人の目が気になったり噂が立ったりという絢爛なサロンでの背筋の通った社交ではなく、賭場でのちょっと怠惰な感じが強いかも。レドモンドが持ち前の野心で思う様欲しいものを手中に収めてゆくので、より駆け引きめいた危うさとかセクシーさという面では「ブーリン家の姉妹」が美しいかと。
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「ザ・セル」
こちらもリハーサルで、ドレスの裾を長く引いている女性の画像から始まり、綺麗だよと紹介された作品。実は公開当時、映画館に行こうか迷っているうちに終わってしまった作品だったので13年越しで漸く、ということになります(笑)。

先だっての「落下の王国」もですが、現実と絶妙な繋がりを持った異世界の描写が好き。色使いと、布の質感に浸らせてくれる見せ方に酔わされます。キャサリンが赤いドレスでアリスのうさぎ穴を落ちてゆくようなところと、角の生えたマッチョなクリーチャーが紫の布を引きながら近づいてくるところが特に。はためきの無重力感がいい。あと馬の生CTが強烈でした。自分の意識の内側って、どうなっているのだろう?見たいような、見たくないような。

さて。現実では凶行犯が被害者を監禁槽(セル)に閉じ込め、非現実(意識の世界)は脳内という一種の閉塞空間の中。捜査官が女性を救出するのと、意識の中でキャサリンがカールの洗礼式を安らかな形で追体験させる構図が対になっているように見えました。ふと思い至ったのは、この世界が深層まで広がる世界を内包した人型のセル(人間ほか生き物)が世界を構成しているという二重構造。監督の頭の中はどうなっているのだろう!

これも(吊り下げ等の痛ましい場面は辛いけれど)大きな画面で見たかった作品でした。
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アルジャーノンに花束を
キャスト(敬称略)

チャーリィ・ゴードン:浦井健治
ハロルド・ニーマー教授/ギンピイ:良知真次
アルジャーノン/アーニィ/白痴のウェイター/チャーリィ(子供):森 新吾
ヒルダ/ファニィ/ローズ(回想)/ノーマ:桜乃彩音
バート・セルドン/フランク/リロイ:高木心平
フェイ・リルマン/ジョー:秋山エリサ
ルシル/エレン/ミニィ/ノーマ(回想):吉田萌美
ジェイ・ストラウス博士/アーサー・ドナー/マット:宮川 浩
アリス・キニアン/ローズ(幻想):安寿ミラ

@天王洲 銀河劇場 1階F列上手センター寄り

初演のちょうど翌年くらいにミュージカルの片鱗に触れて以来、かれこれ7年は待ち続けた待望の再演。

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posted by Elie | MUSICAL | comments(0) | trackbacks(0) |
「ザ・フォール/落下の王国」
リハーサルで各々履いていたスカートがほぼ偏りなく原色が揃っていたところから本作を思い出したと先生が仰り、予告編を見てみたら好みのツボを見事に突かれたので借りてきました。

これ大きな画面で見たかった。だって素晴らしい色彩美!これ以上ないほどの空の青、血の赤、砂の橙、草の緑、水の光…世界がこんなに色や光に満ち溢れているというだけでも心が満たされます。青年の自暴自棄と少女の希望が織り成す陰影も鮮やか。こういう不思議な交流って好きです。

一見すると喧嘩しそうな配色を見事に手なずけている、この感じに見覚えがあると思ったら、「白雪姫と鏡の女王」も同じ監督・同じデザイナーでした。道理で!
タイトルには幾つものイメージが重ね合わされていそう。落っこちること、秋、そこから連想される落葉などやはり落っこちること…それは代償的に実ることかも?と思うのは秋という意味ゆえかしら。本編でそういう季節かは不明ですが。

ストーリーは夢を繋いだようなところもあり、筋があるようなないような、どちらかというと目に飛び込んでくる驚きに重点を置いた感じ。世界遺産で撮影していたり、ビジュアル的に納得です。
思考の飛躍の仕方とか、発想の意外性とかは、糖衣にくるんだギリアムというテイスト。「ローズ・イン・タイドランド」と「Dr.パルナサスの鏡」しか知らないですが。
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Matthew Bourne's SWAN LAKE 2014
2003年初来日の時に見て以来、来日のたびに足を運んでいる大好きな舞台。殴られたとか感電したとかいうレベルではないほどの衝撃を受けた舞台。もう古典を見られない体になりました。音楽が流れてきても、古典版の速度だとまどろっこしくて聞いていられません。私にとって白鳥と言ったら、マシューのこれがすべてなのです。
年々商業ナイズされてきている印象だけれど、好きなものはやはり好き!!

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「るろうに剣心 伝説の最期編」
続編の後半、見てきました。これは前後編を一気に続けて見たい!と言うのも、物語に疾走感があるから。
これでもかと躍動的な殺陣は圧巻の一言。どんどんキレが増し、進化してゆき、ダンスのようにも見えて圧倒されます。例えば健くんの床振り(背中や肩でぎゅるるんっと回ってしゅばっと立て直すやつ)。彼は身体能力のみならず芝居・佇まいなど舞台力をも兼ね備えており…「MW」番外ドラマの時はウブで可愛いと思っていたのに、どきりとさせる仕草や目つきまで見せてくれました。健くん、素晴らしい!

彼の敵役は藤原くん。死の淵、絶望の淵、人間の淵に達した極限の人物で、生身は目と声くらいのもの。最期の哄笑、嘲笑?には彼の人生が凝縮されて、いよいよという時に一瞬だけ慄きが見られたように思います。他、自分が瀕死でも
絶対に由美姐を優しく横たえる紳士ぶりにうっかり惚れそうに。こういう超絶に異様な状態の中から全くかけ離れた人間的な温みが絶妙に感じられるのは、藤原くんだからこそなのかも。

佐藤健と藤原竜也、凄い競演だった……

もうお一方、特筆すべきは神木くん。彼の描き出した宗ちゃんが見せる精神的破綻、その綻び始め、苛立ち“あれ?おかしいな…”は小さな子が思い通りにゆかないことに癇癪玉を爆発させる5秒前のアレを見るかのようでした。独特の凄みが光ります。神木くんは子役の頃から出ているけれど、ナタリー・ポートマンのように成功している役者だと思っています。これからのご活躍にも期待を寄せています。

感動したのは、青紫さまとの死闘を経て、重傷をおして頑張ったじいやがみまかるくだり。剣心に先へ進むよう促す御庭番衆の、信じて託す気持ちが胸に迫り、泣けてきてしまいました。操ちゃんの懸命な姿にもきゅんとなります( ; ; )

他…

比古さんちでお目覚めの剣心、普段はひっつめに結っている髪をおろしていて、図らずもドキドキしてしまいました。動作に伴って髪が前に流れたり、普段はない動きが生まれて、こちらの心も動きます。

髪の毛繋がりでもう一点。薫殿の髪のまとめ方が洒落ていました。横の髪をひねってから後ろに結っているのです。最後の場面で横やや後ろめからのアップになった時に気づきました。

道を極めた世界において他を凌ぐのは技より心だと感じる、奥義会得に至る竹林の場。そこを含めた比古さんちでの静けさ、浜辺での茶番劇が疾走する物語に緩急をつけていました。闘う男の逡巡・達観・熱狂・諸々の美しい姿、それから最終場の素朴な色彩美もいい。
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「めぐりあう時間たち」
今度参加させていただくことになったダンスの発表会で、作ろうとしている作品の直接的なイメージではないのかもしれないけれど、この映画に登場する女性たちのことが何故か頭から離れないと先生が仰ったので、手掛かりにひとつと鑑賞しました。

いちばん近いかもと感じたのは(いや先生の本意はわからないけれども)、振付の違う動きからの合流と、本作の見せ方。時間軸が違うのだけれど、ダロウェイ夫人の本とか、そこに登場する花とか、キーワード、共通項で結び合わされていたり、あの時の子供がこの人だったとか、思いがけない繋がり方をしたりというところです。違う時代・時間の行動が時空を超えて重なる瞬間の不思議な閃き。こういうパズルみたいなの好き。あとは、ダロウェイ夫人を読んでいる、夫の誕生日にケーキを作ったひとが、ベッドに横たわっていた時の目。前のものを見ている眼差しではないのだけれど、前後に貫かれた視線が確かにある、絵画に描かれたような遠くもあり近くもあるあの目。前に向きながらも茫洋と心象を漂い、時に死の淵にも佇むあの目。ヴァージニアも創作中や物思いにふけった時に同種の目をしていたようでした。

各人物たちの線が急に絡み出す終盤、非情であれ狂気の沙汰であれ、銘々の今時点において選んだ線の行き先には他の追随を許さぬものを感じました。時間が解決するもの・しないもの。時間が近づけるもの・遠ざけるもの。人間の力ではどうにもならないことも少なくない中で、翻弄されるのか、じっと耐え忍ぶのか。

時間があれば再見したかったところ。だってニコ様の芝居が…凄くて!!ダルドリー監督の筆致も好きです。
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