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舞台・映画などの鑑賞記、感動をそのままに。
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「髑髏城の七人」鑑賞4回目
 まずはDVD発売決定、おめでとうございます!いつでも好きなところを好きなだけ再生できるようになるのは喜ばしいことですが、スクリーンで体感できなくなるのはそれ以上に寂しいことです。なので、機会があるならばとまたしても登城してまいりました。今度こそが、DVD前最後という覚悟でもって…。


 毎回、涙が溢れる場面は大体決まっていますが、今日は“あたしが赤針斎だ!”で思わずぽろり。我ながら驚きました。しかしこの場面、決死の覚悟で髑髏城に乗り込んでゆくというとき。小栗くんの言葉を拝借しますと、みんなが‘“もう”御免’なものを背負って生きてここまで来たのだと思ったら、本当にたまりませんでした。怒りをぶつけるのとは訳が違うと思いますが、どうしてもやらなければならないこと、通さねばならない筋、形勢は不利だとしても、かかってゆかねばならぬ、そんな選択をせねばならぬ、というときなのですね。その道を選ばねば、死ぬほど後悔するのが目に見えているとき、あの状況下なら私でも、後にじわじわと苛まれながら少しずつ死ぬより、飛び込んでバッサリを選ぶかもしれません。(どこかの男爵令嬢のお言葉のようだ!)そうやって心を決めて、誰かのために死ぬる覚悟で戦おうとする、彼らの姿は悲壮でありながら清々しく、なぜか青春活劇にも見えて、そういう志に触れられたことを貴ばずにはいられません。

 ここでもうひとつがつんとくるのが‘天魔王、てめぇが雑魚だと思ってる奴らの力、思い知らせてやるぜ!’です。宣戦布告には違いありませんが、こてんぱんにのす、とか、ぶっつぶす、とかの勝利宣言ではないところが、いいなと思いました。

 幾つもハッとする台詞があります。私ごときに深い解釈や何やはとても及びませんが、今日ぐっと来たのは太夫の“心の内をさらせば誰かが傷つく”というもの。そうやって本音を押し殺して生きてきたのだろうかと推察される、太夫の半生が映し出されたようだと感じました。

 「蛮幽鬼」DVDの特典で、上川さんが“中島さんの脚本には隙間が描かれておらず、想像の余地がある”ようなことを仰っていたけれど、この作品もまさにそうだと感じています。見る度に新しい視点を開拓でき、その度に発見をし、それを確認するという名目で映画館に来ているという。いえいえ、そんなしみったれた理由なんかじゃござんせん。だって、この作品を愛してやみませんもの!

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「ムーンライズ・キングダム」
 優しく掌で包み込んで、胸に抱いていたくなる作品でした。手を繋いで一緒に歩いているように心が温かく、テンポがよく、曇りなく真っ直ぐに、鐘の音のように響いてくるという感じではなく、紙飛行機がすーっと飛んできて、まるでそこに届くよう定められたかのようにスコンと着陸する。そんな感じ。

 子供の本気には理屈がなくて、“好き”を何のてらいもなく表現できてしまう。そして突拍子もなく、無鉄砲に思われることでも、とにかく純粋に、エンドポイントのようなものが見えなくても、一途に向かうことができるのですね。この先、というより、ただ今。なんだかとても気に入りました。

 監督は「ダージリン急行」や「ライフ・アクアティック」のウェス・アンダーソン。やはり情景や風景の切り取り方が洒落ていて可愛い。とくに冒頭と結末で見られるスージーの家の中を部屋ごとに映して見せるシークエンスは、ドールハウスやボックスアートのよう。色彩も、鮮やかでありながらどぎつくなく、どこか懐かしい香りもして、綺麗です。「ダージリン急行」同様に、黄色と青が印象的。寓話的でありながら、ちょっとシュールなところ(少女がキレて傷害事件に発展するなど)もある語り口も私好み。雷撃を受けて爪先から火を噴いたり煤だらけになったりとあり得ない出来事にオイオイ(笑)となりつつも、すっかり引き込まれてしまいました。「ライフ〜」は結局未見なので、今度借りてこようと思います。
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ゲキ×シネ「髑髏城の七人」鑑賞3回目
 上映劇場が減って来て、これは観に行けるうちにスクリーンで焼き付けておかなくては!と、「モーツァルト」のあとに行ってまいりました。何度見ても、その日その時でアンテナに引っかかるところが違うから、飽きるという事がありません。寧ろどんどん深みにはまっていっています。

 特に今日は、髑髏城以前、つまり天の殿様がご健在だった頃〜本能寺前後のことについて、思いを馳せながらの鑑賞となりました。


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ロックオペラ モーツァルト インディゴver.
主なキャスト(敬称略)

モーツァルト:山本耕史
サリエリ:中川晃教
コンスタンツェ:秋元才加
運命/酒場の主人:鶴見辰吾
セシリア:キムラ緑子
レオポルト:高橋ジョージ
ナンネール:菊地美香
アロイジア:AKANE LIV
フリードリン/ヨーゼフ2世:酒井敏也
コロレド大司教/後見人:コング桑田
ローゼンベルク伯爵:湯澤幸一郎
アンナ・マリア:北村岳子
歌姫(カヴァリエリ):北原瑠美
ダ・ポンテ:上山竜司
ヨーゼファ:栗山絵美
ゾフィー:平田小百合
苦悩:高橋竜太、大野幸人

@東急シアターオーブ 1階4列どセンター


 前回、山本サリエリのメランコリックな美しさに溺れてから、もう役代わりは見なくてもいいかなと正直そういう気分になっておりましたが、逆の配役で見られて寧ろよかったです。このところダンサーをしか見ない私が、今日は山本さんばかり追いかけていました。目も耳も彼に奪われてしまいました。

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劇団☆新感線「蛮幽鬼」DVD
主なキャスト(敬称略)

伊達土門/飛頭蛮:上川隆也
京兼美古都:稲森いずみ
方白/刀衣:早乙女太一
稀道活:橋本じゅん
ペナン:高田聖子
音津空麿:粟根まこと
稀浮名:山内圭哉
遊日蔵人:山本 亨
京兼惜春:千葉哲也
サジと名乗る男:堺 雅人


 以前から気になっていた作品という事もあり、「髑髏城の七人」で無界屋蘭兵衛を演じた早乙女くんが剣士の役でご出演ということもあり、殆ど剣舞見たさに購入しました。先日の「SHIROH」も好きな作品になりましたが、これはそれ以上。策謀や因果の織り成す物語の中に、華麗な殺陣が満載されているのに、強烈に惹かれます。

 物語は復讐劇。同じ復讐劇でも、土門もおサジも最後まで正気だったのが「スウィーニー・トッド」とは違っていたと感じました。復讐が次の復讐を呼び込むのは、両作品とも同じようでしたが、復讐が連鎖的に死を招いてゆき、血生臭い染みが広がってゆくのは、「蛮幽鬼」の方がリアルで恐ろしい。スウィーニーには昔の欧州に伝わる言い伝えのように、どこか非現実的で寓話的な部分があると感じているためかもしれません。

 みんながそれぞれ抱えたものに押し潰されたり腐食させられたりしそうなぎりぎりの綱渡りで均衡を保っているか、或いはきちんと立っていても常に腹の探り合いをしているような油断ならない状況だけれど、美古都に降りかかる出来事は本当につらいものでした。何か一族の罪の贖いでも担わされたのだろうかというくらい。

 ひとつ気になったことには、他の作品に繋がるセリフがあったこと。新感線の作品を多く観てきたわけではありませんが、その言葉からひとつの作品に直結するイメージと言うか、言葉で作品がリンクしていると言うか、そういうふうに聞こえてきたのです。例えば“七つの海を股にかけ”というのは「薔薇とサムライ」の五右衛門の台詞に、“狸親父”は「髑髏城の七人」(ワカドクロ)の三河殿を揶揄した呼び名に、刀衣の船が難破したと言う“難破船”は「SHIROH」でバテレンの子供たちが暮らしていた場所に繋がります。偶然なのか、セルフオマージュ的な何かなのか。見た限りでものを言うしかないのですが、例えばワカドクロの冒頭に“豊臣秀吉”と字幕が出ただけでも、「ZIPANG PUNK」の太閤と、その周辺で起きた事件について(心九郎や五右衛門やシャルルの関わったアレ)想起させられます。次元の違う時系列が、新感線のレパートリーを貫いているように思われてなりませんでした。

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ロックオペラ モーツァルト ルージュver.
主なキャスト(敬称略)

モーツァルト:中川晃教
サリエリ:山本耕史
コンスタンツェ:秋元才加
運命/酒場の主人:鶴見辰吾
セシリア:キムラ緑子
レオポルト:高橋ジョージ
ナンネール:菊地美香
アロイジア:AKANE LIV
フリードリン/ヨーゼフ2世:酒井敏也
コロレド大司教/後見人:コング桑田
ローゼンベルク伯爵:湯澤幸一郎
アンナ・マリア:北村岳子
歌姫(カヴァリエリ):北原瑠美
ダ・ポンテ:上山竜司
ヨーゼファ:栗山絵美
ゾフィー:平田小百合
苦悩:高橋竜太、大野幸人

@東急シアターオーブ 1階7列センターブロック下手寄り


 最近の作品選びは専らダンサーに偏っていますが、これもその例に漏れず。TETSUHARUさんの振付で踊る竜太さんと幸人さんのご活躍が観たくて、行って来ました。エキセントリックな天才、陰のある天才を演じたら右に出る者は居ないと思っているアッキーが、東宝以外のヴォルフを演じると言うのも大きな理由のひとつです。


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2012 ART DANCE KANAGAWA No.9 兵士の物語
主なキャスト(敬称略)

兵士:首藤康之
悪魔:小㞍健太
ヴァイオリンの精:渡辺レイ
王女:中村恩恵
王:後藤和雄

@神奈川県民ホール 大ホール 1階9列下手サブセンター


 観たいと思っているシェイクスピアのソネットは、再演が決まっているそうですがまた平日ソワレですし、なかなか首藤さんと恩恵さんのダンスパフォーマンスにはご縁がなさそうなのと、以前観たロイヤルオペラハウス版(感想はこちら)でこの物語が気に入ったので、観てきました。

 そのときはダンサーが台詞を喋っていたので今回もそうなのかと思っていたのですが、驚いたことにダンサーはひとことも言葉を発しませんでした。なので、タブロでもなければ、ダンスアクトでもない。音源は量販されているCDそのまま。しかも、首藤さんは音楽に、小㞍さんは台詞に踊りをあわせていたので、なんともまとまりのない印象になっていました。台詞はフランス語で収録されていましたので、言葉の意味がわからない私には音楽に聞こえたりしないかと思ったのですが、フランス語だと認識した時点で音楽ではなく言語なのです。それも歌としての言葉ではないですから、脳のあちこちが働いて大変でした。一度字幕上演を観て、ここではどんなことを言っていたかが何となく思い出されてしまったのも、邪魔な音と感じられた一因かと思います。ともかく、これで初めて「兵士の物語」に触れる人にはちょっとわかりにくかったかも、という印象でした。

 コール・ド出演者やターゲットの客層、公演主旨ゆえに仕方のないことと思いますが、驚くほど毒気がなくなっていたのも、物足りなかったです。やはり私はロイヤルオペラハウス版が好き。

 ダンスはそれぞれに見所があってよかったです。和雄さんと恩恵さんにもっと踊っていただきたかったと思うくらい。

 和雄さんの王様は、ハンサムで爽やか。もっとダイナミックなヴァリエーションが観たかったところ。恩恵さんの姫は、クラシカルな踊りを初めて見たので新鮮でした。ふんわりとたおやかで、やはり一枚の絵のような幻想的な美しさに惚れ惚れします。柔らかな雰囲気なのですけれど、踊りだすと空気が締まる気がするのです。首藤さんはいつもながら端正で、ここしかないという角度でポーズを決めます。レイさんは歌うような踊りが魅力的でした。いっそ小道具としてのヴァイオリンをなくし、レイさんだけにしてもよかったかもしれないとさえ感じました。MVPは小㞍さん!声帯以外も言葉を発するのだというくらい、雄弁な踊りでした。無数のボキャブラリーを持っていそう。レイさんとおふたりで踊り始めると、歌に台詞に踊りにと全て揃った感じがして、厚みが増しました。

 コール・ドの中に、綺麗に踊る少年がふたり混じっていて、彼らがセンターにいたときは、そちらに目が行きました。
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ゲキ×シネ「髑髏城の七人」鑑賞2回目
 すっかりこの作品に夢中です。お三方が殿に夢中だったように、身も心も、時間が許せば財布ごと捧げてしまいそうな勢いです。いつ終映するとも知れないため、これはスクリーンで見られるうちに都合がつきさえすれば迷わず行こうと決め、本日2度目の鑑賞をしてきました!今日が見納めでもいいように、捨之介の言葉を借りるなら“悔いは残さねぇ”ように、ひとことひとこと、聞き逃すまじと聞いたつもりです。一挙手一投足、見逃すまじと観たつもりです。それでもなぜ記憶はそばからこぼれてゆくのか…解せませぬ。髑髏城…すごい作品に出会えたなぁと思います…本当に。本当に!

 前回はヒューマントラストシネマ有楽町の小さいハコ、今回は品川プリンスシネマでの鑑賞でした。音響設備が段違いで感動的。“北条氏政殿の軍ですな”という将監の地獄から這い上がったような声の響きがおどろおどろしく、下手から駆込む音や声、最終盤での家康の“馬引けぇ”の遠ざかりもサイドのスピーカーから聞こえてきて、立体的でした。キャパが大きい分スクリーンも大きいので、冒頭の字幕が目を細めなくても読めたことにも感動しました。

 今回の鑑賞前に、太一くんが75手の立ち回りを一度で覚えるというエピソードを読んだのですが、きっとどの殺陣師の手でも、こう来たらこう受けるとかいう基本の型があるでしょうから、実際に覚えた手の数はさほどじゃないのだろうなと思ったのです。例えば‘いろはにほへと’という7手をひとつの流れ▲として覚えたなら、‘とへほにはろい’は▼、‘いろはにほへと ろはにほへとち’とか一個ずつ繰り上がる感じなら▲▲*とか。数列の法則性を見つけるみたいな感覚で。きっとこういうことは、どの業界にもありそうな気がしています。そしてその‘いろはにほへと’を呼吸のレベルで習得するのに要する努力といったら…そこに道を極めたる人の凄みを感じます。果てしない努力。ご本人たちにしたら当たり前のことなのかもしれないけれど。そういう粋を結集した舞台芸術とかエンタメに出会えるなんて、何というしあわせでしょう!

 前回もボロボロに泣いてしまったけれど、今回もやはり無界屋陥落後に兵庫が“起きてくれよ…嫌だ…嫌だ!”と仲間の遺骸に取りすがるところで涙が零れました。以降、生きている彼ら、生きていた彼ら、死んでゆく彼ら、死んでいった彼らに思いを馳せながら、最後まで涙が止まりませんでした。髑髏城で天と共に生きると決めた蘭兵衛、“あの頃”に呪いをかけるが如く固執した天魔王…。ところで、兵庫は“誰でも一度は死ぬんだ、死に場所ぐれぇ自分で決める!”と言いましたが、前述のふたりは二度死ぬことになりましたね。一度は本能寺で精神的に、もう一度は髑髏城で本当に。

 パンフによると、太一くんは髑髏党の襲撃に逃げ惑う村人にも扮したそうですが、あの速さと照明、あの映像の切り替わりでは、とてもとてもわかりませんでした。逃げ延びたとのことですので、斬られずにハケる人を探しましたが、下手に飛び込んで行く青っぽい着物の人くらいしか、そういう人を見分けられませんでした。発見された方、いらっしゃいましたら教えてください。

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劇団☆新感線 SHIROH(DVD)
 ずっと観たかった作品を、DVDにてようやく鑑賞!簡単にではありますが、感想メモを以下に。


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ゲキ×シネ「髑髏城の七人」
 この作品は一昨年の秋口、つまり「ロミオ&ジュリエット」と同時期に上演されていたものです。当時はそちら優先だったため、一応日程を確認するだけして、折り合いがつかず諦めた覚えがありますが、もしこれをあのときに観ていたら、金銭面のみならず生活自体が破綻したかもしれません。そう断言できるくらい鮮烈で、ガツンと食らわされました。出会いは常に最良のとき、というのが持論ですが、ほかに大きく気を散らすものが辛うじてない今、ゲキシネでこれに出会えたことに感謝です。

 初めて出会う人も、再会した人も、みんな傷だらけで、まだその痕が生々しく赤い口を開けている。血に咽び、涙に暮れるのはもう御免だという人たちの“どうして”という叫びは、役者自身の若さもあいまってかとにかく真っ直ぐに響いてきて、特に無界屋陥落後に太夫の言う台詞は、その時代の主君(とは言え荒武者隊や無界屋の場合は家族という向きが強いように思いますが)に対する心を全うして散っていったものたちへの餞でありながら、絶望に打ちのめされている兵庫自身も、たぶん自分自身をも励まそうとしているように聞こえて、思わず涙がこぼれました。この場面に見るように、終わってしまった戦場跡に立ち尽くすのも、沙霧が感情に任せて捨を刺してしまうのも、蘭兵衛が髑髏城に単独で乗り込むのも、“取り返しがつかぬ”ことであり、“もうあとに引けぬ”行為ばかりなのです。選択のときに、それぞれが自分の全てを賭して道を決め、そこを我が道とする。一挙手一投足に注がれるエネルギーの、爆発的に輝く瞬間の積み重ねに、心を揺さぶられないはずがありません。

 かようにエネルギッシュな芝居、殺陣の中にあって、やはり大きな比重を占めるのが、捨之介・天魔王・蘭兵衛の三つ巴でしょう。性格や生き方のまるで違う三人の共通項は、かつて同じ主君に仕え、彼の亡き後に取り残された子供たちであること。野山を駆けずり回った頃から一緒だったかどうかはわかりませんが、少なくとも志を同じくして殿と、また殿のもとで出会った頃から、共にいた三人。城の庭で切磋琢磨した時代もあったかもしれません。とにかく“あの頃”は心身ともにみんな一緒だったのに、どこでどうしてこうなったのか…天が崩れた時からでしょうか。しかしどんなに願っても、どれだけ近づけようとしても、“あの頃”の模倣品はできたとしても、“あの頃”が戻ってくることはない。殿が戻ってくることがないように。例えば天魔王がしたように、屍から肉を剥ぎ仮面を作り、それをかぶることは、自分のうちに閉じこもってしまうこと。誰にも彼の秘めたる思い出に触れることは出来ません。また、蘭兵衛がしたように、数珠を作り数えることは、供養と共に信仰し続けること。いずれにしても、殿のもとで過ごした日々から片時も離れない、離さないようにがむしゃらでいる、縋るような、子供の後追いのようにも感じられて。


主なキャスト(敬称略)

捨之介:小栗 旬
天魔王:森山未來
無界屋蘭兵衛:早乙女太一
極楽太夫:小池栄子
兵庫:勝地 涼
沙霧:仲 里依紗
贋鉄斎:高田聖子
天部の将監:粟根まこと
三五:河野まさと
狸穴二郎衛門:千葉哲也


以下、捨之介=捨、天魔王=天、蘭兵衛=蘭と表記する。

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