BOOK SHELF
舞台・映画などの鑑賞記、感動をそのままに。
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since 2005.Feb
「奇跡のシンフォニー」
 何だ、そこにいたの?探したんだよ。
 家族が揃った瞬間、エヴァンの顔に最高の笑顔が弾け、そんな声が聞こえてきそうでした。

 単に“信じる”とも言えるかも知れないけれど、それでは何だか陳腐に聞こえてしまう作品です。血を分けたとか、血が騒ぐとか、色々な表現があるけれど、それだけでは何となく物足りない。細胞分裂の段階から繋がりを持っているもの同士(要するに親子だ)の揺ぎ無い関係は、海より深く、空より高い。エヴァンが生まれたのは、天から一本の糸で真っ直ぐに繋がった家族だったのです。情動に終始するのではなく、生まれるべくして生まれた生命・愛情…。全ての子供がそんな親のもとに生まれて欲しいと、エヴァンの輝く瞳を見ているとそう思います。本当に目の表情をよく捉えていました。宙のように果てなく深く無垢な目にはこちらの気持ちも浄化され、日頃の垢がすっきりと落ちるようでした。
 ギターやパイプオルガンを奏でるエヴァンの表情は、これ以上ないほど楽しそう。ギターもオルガンも、彼を待っていたかのように歌います。ギターを叩く(爪弾くのではない!)エヴァンもますます嬉しそう。最後にはオーケストラと言う、パイプオルガンよりも大きな楽器を奏でることになるのですが、渾身の思いを込めた指揮も素晴らしかったです!部屋中に音符を書き散らしてしまうのは天才の表現としてありがちなものだけれど、彼の頭の中や心の中、身の回りもあんな感じで音楽に溢れかえっているのかな、と端的に感じさせてくれました。

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posted by Elie | MOVIE | comments(0) | trackbacks(26) |
ノートルダムの鐘[日本語キャスト盤]
主な収録キャスト(敬称略)

カジモド:石丸幹二
エスメラルダ:保坂知寿
フロロー:日下武史(台詞)、村 俊英(歌)
クロパン:光枝明彦
ガーゴイル ユーゴ:治田 敦
      ヴィクトル:今井清隆
      ラヴァーン:末次美沙緒
司祭:松宮五郎(台詞)、佐川守正(歌)

 「ノートルダム・ド・パリ」。未だ観る機会のないローラン・プティ氏の振付によるバレエ作品でもありますが、これは劇団四季が吹替に携わったディズニーアニメーションです。原作は「レ・ミゼラブル」のヴィクトル・ユーゴー氏。岩波文庫では絶版になり、どんなに探しても高価な全集か、それより更に高値のついた中古品しか見つけられず、読むことさえ叶いません。ネットの海から探し出した粗筋を読むところによると、フロローとカジモドの関係やフィーバス(原作で言うフェビュス)の人となり、そして結末がこのディズニー作品とは随分異なるようです。ユーゴーの本ですから、当時の街並みや慣習について事細かに触れながら人物の心情にも迫っているのでしょうけれど、あくまで粗筋を読む限りにおいては、ディズニー版の方が動機付けがはっきりしていて面白いかな、と思いました。ただ、所々訳詞がいまいちなのですよね…。“ベルがベルベル”とか“いいかエスメラルダだ、ダンス”とか、もう少し洒落た言い回しは出来ないものかと頭をひねってしまいました。

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posted by Elie | MUSICAL REC | comments(0) | trackbacks(0) |
「JUNO/ジュノ」
 『あなたがまだその気なら、私もそのつもり』という言葉がとても心に残っています。一風変わったユーモアと、ありのまま思うがままを正直すぎるほど真っ直ぐにぶつける、ジュノらしい言葉だと思いました。本心からの言葉には、例えシンプルな表現でも(寧ろそれだからこそ)心を動かす力がありますが、ジュノがヴァネッサに宛てたこの一言はまさにそういう類のものでした。そこにはヴァネッサへの信頼が込められ、爪の生えた生命体をひとつ‘しぼり出す’決意が漲っていて。自分に起きたことを受け止めて解決策を見出そうとする姿勢はとても前向きだし、言葉遊びや辛辣なジョークが得意な彼女だから(どんなときでも歯に衣着せぬ態度が爽快)突拍子もないことを言っているように聞こえてしまうけれど、物事をよく考えていると思うのです。もちろん、彼女なりに。(という註はつけておいた方が無難かな)

 全く想定外に子宝を授かった16歳の女の子がどういう決断を下すのか、またその周囲の反応はどうなのか。この作品を簡単に説明するには、やはり左のように言うのが良いのでしょう。こういう表現はあまり好かないのですが、いわゆる望まない妊娠を扱った作品は暗く重くなりがちです。これの鑑賞後感に全くそういう感じがないのは、何故早まった行為をするのかと言うことに重きを置いて描いていないからなのかも知れません。周囲の冷ややかな視線に後ろ指を差されながら生活することもなく、家族に軽蔑されることも無い。学校で好奇の目を集めてはいるものの、本人があまり取り合わないというのも大きいでしょうけれど、悪い人が居ないのが何よりホッとしますね。妊娠を告げられた時はただただ驚くばかりだった両親も、的確なアドバイスをくれたり、ジーンズを仕立て直したりと、さりげないところで親身になっているのが心温まります。

 こういう話でよくあるパターンの“妊娠が解った途端に男の態度が一変”というのもなく、ブリーカーのジュノに対する気持ちが一貫して誠実なのも救いです。二人が仲良くギターをかき鳴らして歌うラストシーンは、ほのぼのしていて思わず笑みが零れてしまいました。

追記
 スラングだらけで訳が解らなかったけれど(イヤイヤもともと英語は解りませんが!)、言葉が生き生きしていたなぁ〜。それと表情も。好き嫌いをはっきり表現するジュノがキュートでした。
posted by Elie | MOVIE | comments(0) | trackbacks(19) |
「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」 on DVD
 早いもので、劇場公開からもう半年も経ってしまったのですね。首を長くして待っていたスウィーニーのDVDを、例によって特典Discから鑑賞しました。

■特典
 やはり現場の貴重な映像は、見ていてワクワクしますね!製作途上のものがそこここに無造作に置かれている様子や、デジタル処理前の色味などが解るのも、博物館とか水族館で一般公開されていないブースを見学させて貰っているような気分になります。
 一番気になっていた喉元を切り裂く仕掛けも明かされていて、とても興味深く見ました。血糊は幾つかのインタビューで語られている通り、本当に明るい色でしたね。血液っぽさはあまり感じさせない色味かと思いますが、あれだけの量が無秩序にぶちまけてあるとそれはそれでゾッとします。人間の血液量以上の血糊を1回のシーンで使ってしまうと言うのだから…うーむ、凄い。写実的にしすぎず、寧ろ寓話的になるようにこだわって作ったそうですが、それは尋常ならざる血糊の量にも表れているのかな。それがあのラストシーン、美しいと言う言葉はそぐわないのかも知れないけれど美しいと言う他ないあのシーンにも彩(!)を添えているのかも。メイキングブックには、ティム自らこの場面の2人の周りに血糊を注ぎ足す写真がありましたが、そういう絶妙な感覚ってとても凄い。少なすぎても嘘だし、多すぎてもくどいし、血糊の量だけに限った話ではありませんが、そこの所の微調整にプロフェッショナルの職人魂を見て感激します。
 映画の特典Discとして不満だったのは、キャストインタビューや大道具小道具を紹介するセクションが少なかったことです。製作過程がミュージカルから映画に至るまでの変遷に留まってしまったのも、何となく中途半端な印象でした。スウィーニーのお話がどのように生まれて現在の形になったのかは、歴史的背景と合わせてとても勉強になったし、それを踏まえて本編を観たら、ジン(酒)が登場するのもごく自然な流れだと解りました。…それでもやはり、撮影の舞台裏をもっと見てみたかっただけに残念です。そういう分野に関しては、メイキングブックの方にたくさん書いてある気がしますね。グラン・ギニョールの話(ホラーは基本的に苦手なので少し苦痛でした;)を削って、役作りとか歌の稽古風景とかを見てみたかったし、ローラ・ミシェル・ケリーやジェイン・ワイズナーをもっと紹介して欲しかったです。
 余談になりますが、2008年日生公演「ベガーズ・オペラ」のプログラム(p.36)に使われていた挿絵が登場したので気分が盛り上がりました。ベガーズの時代と100年ほどの開きはあるのものの、一部の劣悪な環境は大して変わっていないのかな。

■本編
 感想は、劇場鑑賞時にこれでもかとしたためたのでこちらでは省略いたしますが、今回新たに感じた何点かを書いておきます。
 全体的に暗〜い色調なので仕方ないと言えば仕方ないのですが、スクリーンで観るのと違い、影になる部分は完全に真っ黒く見え、表情が解りづらかったです。。窓の外を見つめるスウィーニーの哀しい目は、逆にコントラストが利いて綺麗でしたけれどね。
 特典の方で喉元バッサリの種明かしを見た後だったので、カメラのこちら側で必死にポンプを操作しているスタッフがいると思うと、凄惨な場面であるはずなのに不謹慎にもクスッと笑ってしまいました。
 最後のトビーの表情に注目してみました。目の下の隈、剃刀を振るう瞬間の憎しみこもった顔。自分に良くしてくれたミセス・ラヴェットを奪ったスウィーニーへの復讐心からの行動だと考えるのが自然かな、と思ったのでそう仮定しますと、復讐は悪循環を繰り返すと言うことと、我が身を滅ぼすと言うことを強く感じますね。愚かで、恐ろしい話です。
posted by Elie | JOHNNY DEPP | comments(0) | trackbacks(2) |
レベッカ
主なキャスト(敬称略)

マキシム・ド・ウィンター:山口祐一郎
「わたし」:大塚ちひろ
ダンヴァース夫人:シルビア・グラブ
フランク・クロウリー:石川 禅
ジャック・ファヴェル:吉野圭吾
ベン:治田 敦
ジュリアン大佐:阿部 裕
ジャイルズ:KENTARO
ベアトリス:伊東弘美
ヴァン・ホッパー夫人:寿 ひずる

指揮:西野 淳

19列20番台@シアタークリエ

 待ちに待った「レベッカ」!原作と出会い、舞台版日本上陸の朗報に歓喜した日からおよそ9ヶ月。遂にこの日を迎えたという胸の高鳴りは血管や筋肉から座面に伝わり、地が拍動しているのではないかと思うほどでした。
 実は今日は、シャーロット様とご一緒に観劇しました。「EDWARD SCISSORHANDS」以来およそ1年半ぶりにお会いしたのもあって、話は尽きませんでしたね。本日はありがとう御座いました。是非またお会いしましょう!!

 以下、遠慮なくネタバレがありますので本文は全て畳みます。なお、余す所なく書こうとしたら埒が開かないので、印象に残ったもののみに留めておきます。

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posted by Elie | MUSICAL | comments(4) | trackbacks(1) |
ルドルフ ザ・ラスト・キス
主なキャスト(敬称略)

ルドルフ:井上芳雄
マリー・ヴェッツェラ:笹本玲奈
皇太子妃ステファニー:知念里奈
ラリッシュ:香寿たつき
ヨハン・ファイファー:浦井健治
ツェップス(ウィーン日報編集者):畠中 洋
英国皇太子エドワード:新納慎也
プロイセン皇帝ウィルヘルム/カーロイ:岸 祐二
ブラット・フィッシュ:三谷六九
オーストリア首相ターフェ:岡 幸二郎
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ:壤 晴彦

指揮:塩田明弘

@帝国劇場 1階U列10番台

 事前に別冊プログラムを取り寄せ、誘惑に耐えかねてページを開いてしまったため、舞台の雰囲気は何となく頭にありました。しかし、どうであろう!この絢爛豪華で贅沢な音響は!煌びやかと言うよりはずっと落ち着いたサテンの質感、緑を基調とした色彩美。そして重機が丸太を転がすような、重く暗く魅惑的に響く低音。皇太子と男爵令嬢の苦悩を鮮やかに描き出していたと思います。舞踏会の場面が額縁のように囲まれているのも、ルドルフが密かに抱えている閉塞感のようなものを象徴していて大胆かつ斬新だと思いましたし、有名絵画の一部を強拡大し、時には回転させて壁紙に使うのも、目新しくて強烈な印象を残しています。(『美しき戦争』の洋品店の壁紙がどなたかの描いたヴィーナスで、ルドルフの自室の壁紙がグイド・レーニの「聖セバスチャンの殉教」(に見えました)だと言うことしか解りませんでしたが)
 心に強く残っている演出がたくさんあります。例えば、ブラット・フィッシュの駆る馬車が木立の中か街の中を走り抜けていくのを表現した、光の線を優しく重ねたようなスポットライトが流れるように動く演出がとても美しく、見惚れてしまいました。また、マリーとルドルフが再会する駅舎も、多くの恋人たちや家族の出発や別れが生んだドラマが詰まっているのかしらと思ったら、途端に壮大な光景に見えてきました。

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posted by Elie | MUSICAL | comments(4) | trackbacks(0) |