ぼく:浦井健治
母:柚希礼音
大切な人たち:成河
ピアノ:木原健太郎
パーカッション:土屋吉弘
10月30日配信開始(アーカイブ配信にて鑑賞)
多分、過去の私だったらぼくの視点で色々考えて、母の気持ちは想像の範疇を出なかったと思います。でも子を持つと、何だかがらりと世界の軸が変わってしまったような気がします。こんなに母に感情移入することあるかいってくらい、冒頭から胸がざわつきました。だって大事な子を失うかもしれないと思ったら、ねぇ。「命をあげよう」だって、母親の覚悟ってすごいなぁくらいにしか感じられなかったのが、途端に他人事じゃなくなるんだから、我ながらびっくりします。
浦井さんには、どことなくチャーリィ・ゴードンに通じる色味を感じました。でも自分が見えている世界の中での動揺がチャーリィで感じたときの比じゃなくて、壊れそうで狂ってしまいそうでこわい感じがありました。いろいろなできないを事故を理由にするのが、だんだん仕方がないことでなくなってゆくのが見てとれるというか、徐々に息ができなくなってしまうの。そんな感覚になりました。
柚希さんのことは、実は水香さんのインスタでしか拝見したことがなくて……レオンジャックのときですね。華やかなショーマンという印象を抱いていたので、こんなに素朴なお母さんになってしまうんだとまずびっくり。祈るしかできない・見守るしかできないっていうのは、乳幼児に対して身を呈するような守り方をできるっていうのと比べてしまうと、それもまた歯痒くて歯痒くて歯痒かっただろうなと。ぼくがドデカ鍋を染め物に使ってしまったくだりで、新しいの買ってこなきゃねって嬉しそうに息子を見つめていたのが印象的でした。ちゃんと見守れる親になりたいものです。
「ビッグ・フェラー」でも鳥肌ものの変身ぶりをみているはずの成河さん。「春琴」でもみているはずの成河さん。本作では成河さんがさまざまな役どころに変わる配役を選びましたが、まさに私が見たいやつでしたね…本当は狂っていて怖いくらいのが混じっていて欲しいところですが、さすがに作品柄そういうのはなくて。いやでも鮮やかで素晴らしいです。ヒカルくんには末永く仲良くいて欲しいと思ったし、お父さんが蓮の葉?を持ってきてくれたときは、ちゃんと応援してくれてる!と愛おしくなったし、それって上辺だけじゃなく各キャラクターが役者の中で人格のように根深いものが作られているから何だろうなって素人ながらに感じるところあるし。成河さんすごい!ひとり芝居も観たかったなぁ…!!
音楽がね、優しく包み込んでくれる雰囲気のとてもまろやかで柔らかなメロディーで素敵でした。心が不安定なところでは、思い悩んでぐしゃぐしゃなときの心の風景と似た色を出してくる感じがしました。
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