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「ヒア アフター」
 バラバラのピースがより合わされて、離散して、変化してゆく。静かに、確かに、物語が進むにつれて後ろに足跡が残っていて、雪解けの透き通った水がじんわりしみこむ、こぉんと柔らかに響いてくる結晶のような物語でした。しんみりと物悲しいけれど、どこか温かな感じもあって、ジェイソンとのコンタクトを切実に求めるマーカスの姿には、少し共感も覚えました。選曲と画面のマッチングが素晴らしい。「ミスティック・リバー」の時も画面の邪魔をしない音楽がいいと感じたけれど、そのときも監督の手による曲が使われていたのだったか、ちょっと覚えていませんが。

 何の前知識もなく観に行ったので、冒頭から津波の映像で驚きました。パンフレットにもしつこく書いてありましたが、こういった場面でハンディーカムを用いたガタ揺れの臨場感ある映像を作りたがる監督が多い中、報道のような、冷徹な眼差しを持って荒ぶる自然の前に成す術なく飲まれてゆく人間の様子を捉えている手法が逆に恐ろしく感じられました。

 安らかに死ぬのと突発的に死ぬのとでは、訳が違います。こちらに魂の裾を名残惜しく引きながら遠ざかっていく前者と、ハッと目を開けた瞬間すでにこちらにはいない後者。津波も、テロも、交通事故も、予測されたものではなく、突然起こり、突然当事者を連れていってしまう、或いは連れていかれてしまうのです。これが安らかに訪れた死なら、マーカスとてまた違った行動をしたかも知れません。唐突に受け入れ難いことを突きつけられたら、誰だって戸惑いを禁じ得ませんもの。

 実を言うと、鑑賞後に外へ出るのが少し怖かったです。そういうアクシデントとの遭遇の可能性が自分にも割り振られていないとは言えません。未知の世界との接触を恐れてではなく、実際にそれ(臨死体験で見える光景)を見てしまったら、マリーの言うように安らかなのかも知れないけれど、やはりそこに至る一撃のことを考えて戦慄してしまいます。結局のところ、まだこちらで生きている私にはこちらでの感覚が全てであるので。
posted by Elie | MOVIE | comments(2) | trackbacks(10) |
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コメント
同じ頃に私もこの映画を観ました。
まさか数日後に日本で大震災、大津波が来るとは知る由もなく。
でも、上映中止になる前に観てよかったと思っています。
私はClint Eastwoodをこよなくrespectするある意味freakですが、彼がこのようなスピリチュアルな本にメガホンをとるとは意外です。
スピルバーグも目の付け所が意外。

メラニーが号泣する場面は、父親との間に何があったのかピンときて胸が苦しくなりました。

双子の男の子もまるで護絵の天使の様でしたね。

日本ではDVDにならないと思いますが、深く胸に刻みたい作品です。
2011/03/30 03:42 by cecilia
ceciliaさま

監督の作風はよく解りませんが、イーストウッドとスピルバーグの取り合わせがちょっと珍しいようなことが諸所で言われているみたいですね?
せっかくの良作なのに、やむを得ないとはいえこんな形で上映が打ち切られてしまって、本当に残念です。本当、仰るとおり観ることができてよかったと思います。

男の子にまつわるお話には涙を禁じえませんでした…!
健気で、母親にとっては天使そのものだったのではないかしら。

それにしても…コレを観た直後に東北地方があらぶる大自然に飲み込まれてゆく映像を見たときは、本当に胸が痛みました。旅行で行ったことがある場所が、そこに生活していた人々がどうなってしまったかを考えたら、つらくて…
2011/04/02 23:00 by Elie@管理人
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2011/03/12 10:53
静かで前向きな物語。   
Akira's VOICE
2011/03/13 15:52
まずカミングアウトすると、実は監督としてのクリント・イーストウッドはあまり好きではなかった。 もちろん、対で戦争を冷酷に描写した「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」は傑作だと思っていたが。 ところが、最近の「チェンジリング」でフまずァースト・ダウ
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2011/04/24 09:42
11-20.ヒアアフター■原題:Hereafter■製作年・国:2010年、アメリカ■上映時間:129分■字幕:アンゼたかし■鑑賞日:3月13日、渋谷シネパレス■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド□脚本・製作総
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