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「カムイ外伝」
 カムイの軌跡に累々と連なる死体に、抜け忍の背負う宿命の重さを感じました。どんなに大きな相手・強い敵を斬り伏せても、その闘いに終わりは見えて来ず。幸島でのひと時のように心に抱えた闇が時おり薄らぐことはあれど、決して晴れることはなく。彼の負った宿命は天空の暗雲と違い、風で消し飛ぶこともなく重々しく垂れ込めたまま精神を苛み続けるのです。不動に“地獄だな。ここがお前の墓場、お前は自分の作った地獄で死んでいくのだ”と言われたクライマックス、彼の心に突き刺さったものはどんなであったか…想像の域を超えています。逆境に耐え、自ら進んでその中に身を置いて鍛錬してきたカムイだからこそ『生き抜け!』るのだと思いますが、常人だったらたちまちのうちに精神を病んでしまうに違いありません。

 現状を見極めんとする、感情の一切を排した獣のような曇りのない目。それに対して、スガルや半兵衛の家族模様を見つめるときの表情はどこか切なげで、憧憬すら感じさせます。非人とされ蔑まれてきたゆえに育まれた猜疑心、それが伸ばした忍としての能力。これらは幼い時分、(恐らく)必要な愛情を受けられなかったカムイにとって、人間的な幸福を求める一方、真っ先に邪魔になるものだったでしょう。彼の特殊技能は自身の生命線であり、必ずしも他者を護る為のものではないからです。現に、半兵衛一家もろとも幸島の島民は全滅させられてしまいました。

 欲を言えば、このあたりの描写にもっと説得力があると良かったですね。カムイの過去、忍社会の過酷さの語りが弱く、カムイが抱く苦悩や、なぜ生きようとするのか(まぁ、ふとした瞬間に死にそうな境遇において、死にたくない生きたいと思うのは自然でしょうけれども)といったところが決め手に欠ける印象でした。

 海や鮫など、視覚効果の多くは空々しく稚拙でした。人物の心理描写も然りですが、技術的な面においても物語的な面においても、あれもこれも取り入れようとして全体的に焦点がぼやけている気がします。しかし、苦無や千本、飯綱落としや霞斬りなどの忍術、生身の肉体・息遣いも生々しい殺陣はとても鮮やかで、見所のひとつとなっていました。また、原作の力強いタッチを思い出させる岩場(冒頭、カムイが聞き筒を用いている場面)の質感が好きです。

 実は、この作品を観ようと決めたのは、他でもない開次さんの存在です。彼が演じた渡衆トベラの舞は男臭く、汗臭ーい感じがしました。それでもやはり美しく、豪胆な雰囲気ではありましたが指先まで細やかに神経を配った、生命力に溢れた骨太な踊りが素晴らしかったです。床を踏み鳴らすのが良いですね。心から楽しそうなお顔をされています。生きる喜びというのか、そういうのを感じます。カムイとサヤカの場面が挿入されるのが、邪魔で邪魔で仕方ありませんでした。トベラダンス・ノーカット版を観たい!!!
 因みにこのトベラ氏、甲板で握り飯を頬張る姿がとても可愛らしゅうございますが、不動が無差別に盛った毒に中って、船や他の渡衆とともに海の藻屑と消えてしまう最期はひどく哀しいものです。。。

 ところでエンドロールを見て驚いたのですが、小林十市さんもご出演だったのですね!本編内ではちっとも判別できませんでしたけれど、トベラダンスの場面で途中から開次さん一緒に踊り出した人が、もしかしたら十市さんではないか?と思っているのですが…。
posted by Elie | MOVIE | comments(6) | trackbacks(11) |
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コメント
カムイ行ったんですね。
開次さんダンスはやはり素晴らしかったのですな。早く見たい!
2009/09/27 09:49 by T
T嬢

開次さんの舞台を観に行く感覚で行って来ました。
黒開次(笑)格好よかったですよ!観に行く蔡は…もとい観に行く際は、握り飯頬張る姿にも注目してください。
ケンイチさんはやはり目のお芝居が凄い!
2009/09/27 10:38 by Elie@管理人
了解です!
観に行く蔡は(笑)開次さんをがっつり見ますよ!
ケンイチさんの目力はすごいよね。楽しみだ〜♪
2009/09/27 11:00 by T
T嬢

過酷を極めるってこういうのを言うのか、という感じです。
観に行く蔡は(笑)お楽しみに♪
2009/09/27 11:07 by Elie@管理人
公開初日に開次さん見たさに行ってきました。

意外に松山ケンイチがカムイらしくてビックリでしたが
鮫とスズキは、もう少し自然体に出来なかったのでしょうか?

開次さん良かったですよね〜。
踊りは御本人が数日考えたみたいですよ〜。
私も間に入るカムイとサヤカが邪魔でした。

十市さん出てらしたんですか…ドコに?って感じなんですけど(-_-;)
2009/09/27 11:08 by 瀬木あおい
瀬木あおい様

TDV観た方で、この映画も…という方は少なからず開次さんがお目当てではないかと思います(笑)
踊ってくれと監督直々のご要望があったそうですからね。本当にあの場面だけはノーカットで欲しいです。

十市さんはエンドロールでお名前を発見したので、本編内はまるでノーマーク。撮影期間中と思われるご本人のブログは、公式サイトもろともデザイン変更か何かのために閲覧できなかった期間とかぶっているようで、確認できず…。
IMDbにも記載はありませんでした。。

魚類のCGもですが、あからさまなワイヤーアクションも気になりましたねえ。
2009/09/27 11:29 by Elie@管理人
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