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舞台・映画などの鑑賞記、感動をそのままに。
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「パンズ・ラビリンス」
 あくまで私個人の抱いたイメージですが、昨夏の「ローズ・イン・タイドランド」が“現実世界で生きる手段の一つとしての妄想”なら、今作は“現実世界で生きることを拒絶するための妄想(或いは幻想)”という位置付けなのかも知れません。厳しい現実に対して、前者は不思議と前向きであり、後者は多くの懊悩を抱えたままで背を向けている感じでしょうか。とは言え、この比較は実際のところ気の利いたものではありません。主人公の魂が地下迷宮の奥にある魔法王国の姫であるという点で、そもそもの設定が異なるからです。ゆえに、オフェリアの出会ったパラレルワールドは決して彼女の妄想を孕んでは居ず、闇の恐怖・現実の恐怖がそのまま投影されたようで、人形の頭部に羽が生えて飛び回っている愉快で突飛なものではないのです。

 どっしりと目の前に立ちはだかる壁の厚さ、試練の困難さ。残忍な養父、具合の優れない母、気味の悪い生き物、泥だらけの服、木の陰から何か別の異形が飛び出してきてもおかしくなさそうな薄暗く恐ろしい静寂。オフェリアの速い呼吸を聞き、首筋を伝っているであろう冷や汗を想像しながら、特に第二の試練では、椅子に自分の鼓動が伝わるのではないかと思うほどハラハラドキドキしていました。現実と幻想のパラレルワールドと言っても、どちらにも暗い影があり(つまり、その辛さから言ったらどちらの世界も大差ないと思うのです)、容赦なく気味の悪い生き物が出てくるあたりに、作品の質の高さと製作者の強烈なこだわりを感じます。大尉のセルフ・オペや、某相撲部屋の事件を彷彿させる場面など、正直観るに耐えないほど痛々しいシーンは確かに思いのほか多く登場しますが、こういう万人受けを狙わずこだわりを持って作られた精緻で独特の質感に溢れた作品が好きなので、未知の世界に出会えた満足感をとても感じます。

 仮に自分がオフェリアの立場だったら、真っ暗な所・化け物のいる所・虫のいる所・粘液質な所…には行きたくないし触れたくありませんけれど、恐れながらも勇敢に突っ込んでいく主人公の子供ならでは(?)の勢いを感じて、凄い娘だと感心することしきりでした。

 他に印象的だったのは、パンのボディーランゲージがのっぽさんに見えたことと、ペイルマンの存外ユーモラスな仕草です。それと王国の玉座の高さ。“お父様の隣にお座りなさい”と仰いましてもお母様、どうやって座るのですか…上下可動式なのでしょうか(笑)。物語の幕切れ、パラレルワールドのそれぞれにおいて全く対照的なエンディングを迎えるのが良かったです。

posted by Elie | MOVIE | comments(8) | trackbacks(29) |
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コメント
TBありがとうございます。
「イス高すぎ」は、同じネタを書いていると知って感激しました(笑)。
2007/10/27 22:31 by 暖気団
暖気団さま
こちらこそ、TB&コメント有り難う御座いました。
私も暖気団さまの記事を拝読して、あれれと面白くなりました。不思議の国なので深い突っ込みはナンセンスなのかも知れませんね(笑)
2007/10/27 22:57 by Elie@管理人
あれだ、あの赤い靴には『オズの魔法使い』なみの跳躍力が秘められているに違いない!!(笑
2007/10/29 10:29 by 暖気団
暖気団さま
お返事が遅くなってしまって済みません。。
残念ながら「オズの魔法使い」は未見なのですが…
私たちには想像もつかない昇り方があるのでしょうね〜
2007/11/04 16:31 by Elie@管理人
明けましておめでとうございます。
2007年最後の映画鑑賞がこれでした!
大晦日まで映画館に向かい、元日にも映画鑑賞。
これで映画の神様が微笑んでくれるに違いないと、
今年も新たな気持ちでスタートです。

素敵な映画に数多く出会えますように♪
2008/01/02 23:31 by kossy
kossyさま
あけましておめでとう御座います。
>2007年最後の映画鑑賞がこれ
 とは、なかなか濃い締めでしたね。
 雑誌を読んでいると、今年も観たい作品が結構ありそうでしたし、kossyさまがブログで挙げていらした作品(スウィーニー・トッドやテラビシアなど)も気になります。
 映画の神様の微笑をgetしたkossyさまのレビューに、今年も期待しています♪
2008/01/02 23:57 by Elie@管理人
こんにちは♪
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
「ローズ・イン〜」は全然楽しめなかったのに対して、こちらの「パンズ〜」はかなり面白く鑑賞しました。
スペイン内戦という現実の舞台が好みだったのかもしれません。
母親目線で見ると、オフィリアが健気でたまりませんでした。
あの王国の玉座はちょっと高すぎでしたよね(笑)
しかも女王があのママだったので、ちょっとだけ「んーーー」って思ってしまったのでした。
2008/01/13 11:54 by ミチ
ミチ様
こんばんは♪
今年も宜しくお願いいたしますm(_ _)m
全くの妄想世界である「ローズ・イン〜」より、現実世界との絡みがある今作の方が、悲劇的ではあるものの入り込みやすかったかな〜と思います。
女王はやはりあのママだったのですね。パパの顔(意外とお年を召していましたね;)と玉座の高さに気を取られて(笑)しっかり確認できなかったのです。。
地底の人は、現世で死ぬと元いた世界に戻るのかしら??とか、考え込んでしまいました。
2008/01/13 18:54 by Elie@管理人
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