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「トンマッコルへようこそ」
 コミカルな展開に笑い、破壊に衝撃を受け、離別に涙を禁じ得ない、それらの感情の殆ど全てが奇跡の理想郷で融合する。のほほんとした場面が多いのかと思いきや、血塗れの死体もその死に際も描かれることがあり、理想郷とのコントラストが凄まじかったです。

 ヨイルの煌きは素晴らしい。表情の一つ一つがとても魅力的でした。まず予告編にもある“指輪”のシーン。それが引き金となり、結果的に納屋の蓄えがポップコーンに化けてしまうのですが、其の場面が妙にファンタジックで可笑しいのです。一斉に空中に舞い上がったトウモロコシがポンッと可愛らしく弾け、それが雪のように降り注ぐのですから!モチーフ的には「シザーハンズ」とかぶる所ですが、印象が全く違うためにどこかで見たぞという感じはそれほどしませんでした。其の光景をいとも珍しそうに、同時に心底楽しげに見上げ、踊るように喜ぶ彼女の笑顔と来たら!次には、偵察隊に乱暴されそうになった彼女をテッキが助けようとして“可笑しな娘っ子だ”と言った風なことを言ってしまうのですが、ヨイルはそれに少なからずショックを受けてしまうのですね。髪を弄りながら“ひどい、何てことを言うの”といった表情をする彼女がとても可愛らしいのですよ。

 其の後の悶着で彼女が逝ってしまい、テッキが偵察兵に対して怒りをぶつけるわけですが、彼を安易に射殺しない所が良かったです。自分の一言が一時だけ彼女を救いはしたものの、後悔と傷心を互いの心に残したまま別れる結果になってしまったのは、相当に彼の心を深く抉り取ったでしょう。これがあるから、本当に最後に挿入されたシーンが救いとなる気がするのです。子供(本当に子供みたいなのです)が固まって昼寝をしているような部屋にヨイルが入ってきて、すやすや眠るテッキの耳の上に自分が着けていた花を挿してあげる。それを知ってか知らずか、彼女が軽やかに去った後でテッキの寝顔が幸福そうに微笑む。ホッと一息つかせて貰って、エンドロール。この映画から最後に受ける印象が重くも暗くもならなかったのは、このためなのではないかな。

 サンサンの存在は、兄貴の笑顔とあいまってとても心和みます。猪の肉を頬張った時の笑顔が最高。柔らかそうな頬は、食べることが好きなように感じさせます。歌も巧く、マイク(トウモロコシ…)を握れば村のアイドルに変身、収穫祭では女の子の視線を独り占め、でしょうか。とても魅力的なキャラクターでした。しかし調子ばかり良かった彼も、兄貴の死に際しては其の目から何かが消えるのです。迫る敵機に渾身の怒りをぶつけるが如く、我が身の保守を忘れてトリガーを引き続ける…。やがて鉛の針が見えない糸で彼を雪原に縫い止め、彼の操っていた銃身が装填された弾丸全てを排泄すると、頭から溢れた血液がヘルメット(村人曰く‘洗面器’)を満たし、そこからも溢れて滴るのです。普段の様子とは打って変わって、狂ったように挑むサンサンの目がフラッシュのように瞬く炎を反射してぎらつき、恐ろしくも思えました。

 ピョ少尉が抱く過去の闇が壮絶。人に揉まれ、親とはぐれ、声も枯れんばかりに泣き叫ぶあの子等、其の子等を見失った親たち、そして彼らが逃げ惑うのに踏みしめている橋もろとも、爆破せざるを得なかった…これは推し量るに余りあるものです。彼の苦悩は想像すら出来ません。爆破せよとの上層部の命令に対し、拒否を叫ぶ彼の声と顔一面に浮いた脂汗が、私の呼吸を妨げるかのようです。しかしそんな彼だからこそ、村と村人が大いなる危機に晒されるのは耐えられないのかもしれません。リ中隊長に言われて村を守る作戦の指揮を取ることになるのですが、この時の中隊長と少尉はとても男前で素敵でした。

 物語のクライマックス、彼らは愛する村を守ろうと大胆な作戦を決行します。奮闘の甲斐あり作戦は成功。彼らの、達成感に満ち、状況に反して穏やかな笑顔は本当に美しいものでした。彼らの周囲に炸裂する爆弾が上げる炎はまるで花火。彼らを讃えるかに見えました。皮肉ですよね、彼らは恐らく、あの場に散っていったのですから。最後、戦場を埋めた雪の上から白い蝶が5匹か6匹飛び立ちます。…私の涙腺が警戒値に達したのは、ドングがスミスおじさんに駆け寄る別れのシーンです。スミスおじさんは偵察兵の一人と共に連合軍に戻るのでしたが、彼の結末は描かれていませんでしたね。戻る途中に作戦の成功を知って、複雑な笑顔と涙を同時に零していましたが、それきり。

 墜落した飛行機を緑が覆っている様が「風の谷のナウシカ」を、イノシシ退治のくだりは「もののけ姫」想起させます。イノシシは、タタリ蛇こそ出てはいないもののまさにタタリ神。巨大だし、体型もそっくりでした。あのシーン、全てスローモーションで描かれて居るので、イノシシの毛並みや人間たちの顔芸と紙一重のリアクションが逐一詳細に解って、愉快です。これ以後、彼らの関係から敵味方の区別が消えていくので、実はとても重要な出来事なのですね。

 音楽も、世界観が素晴らしいです。壮大な曲や、コロコロと可愛らしい曲もあり、旋律や和音が久石さんらしいと思いました。イノシシ退治の場面の曲は、タタリ神の曲と似ていましたが、セルフオマージュになっているのかしら。。

 憎むって言うのは、何も生まないのですね。食べること、笑い合うこと、愛すること…平和は何と尊いことなのか、改めて感じさせてくれる作品でした。

 予告編では「敬愛なるベートーヴェン」を見る事が出来ました。ベートーヴェンが渋くて良い!ダイアン・クルーガーの凛とした美しさにうっとりしました。第九の第4楽章は殆どフルで聞かせてくれるのかしら。楽しみです。
posted by Elie | MOVIE | comments(4) | trackbacks(9) |
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コメント
こんにちは〜♪
すっかりご無沙汰をしてしまいました。
お元気でしたか?
いつの間にか月日は流れ・・・すっかりこちらも様変わりなさっているー。
同じ作品の鑑賞もなかなかなかった気もしますが、やっと堂々とTBをつけさせていただけるわ。笑
相変わらず、読んでて笑みがこぼれるほどの作品への愛情を感じます〜。さすがです、Elieさま!
いい作品でしたね。「泡雪」もいいですが「ポップコーンの雪」もかぶりたい!笑

敬愛なるベートーヴェン…一足先に見てます。第9のシーンは圧巻でした。4楽章はフルではないですが、どの章も万遍なく自然に繋がれてますので聴きごたえありましたよ。ぜひご覧くださいな♪
2006/11/12 16:26 by charlotte
charlotte様
こちらこそご無沙汰しておりました〜
この通り、パソコンで長文したためるほどの健康体で過ごしております。charlotte様は如何ですか?お忙しかったとお見受けしますが…体調など崩されていませんか?

何を隠そう、初の韓国映画でしたので、少しでも記憶の鮮明なうちにと思って書きましたら、記念碑的に長い感想になってしまいました。。シュリもJSAも、観ようと思って結局観ていないのですよ…
私もポップコーンの雪をかぶりたいです!一年分のポップコーンと言うことになりますから、どう考えても太ってしまうわ♪(・_・;)

敬愛なるベートーヴェン、つい先ほどcharlotte様の感想を読んで参りました!肖像画そっくりのエド・ハリス(笑)、そして音楽、楽しみです。「弦楽四重奏曲大フーガ」だけでも予習しておこうと思いま〜す。
2006/11/12 17:56 by Elie@管理人
TBありがとう。
よくわかるレヴューだと感心しました。
サンサンなんかは、脱走兵ですが、韓国の戦争に狩り出された大衆そのものを象徴させていますね。クラブで歌っていれば、そういう享楽で生きたいんですよね。
でも、そんな大衆も、どこかで、自分の闘いを自覚します。
同胞を殺すのではなく、同胞を護るんだ、という誇りの中で・・・。
2007/03/11 10:10 by kimion20002000
kimion20002000様
コメント有り難う御座います。
よくわかる…だなんて、勿体無いお言葉、有り難う御座います。そう仰って頂けて嬉しいです。
>同胞を護るんだ、という誇りの中で
 あの瞬間のサンサンはとても素敵でした。一番感情移入しやすかったのがサンサンだったのですが、kimion20002000様が仰るように大衆を象徴させたキャラクターだからなのでしょうか…。そう思いました。
2007/03/11 19:20 by Elie@管理人
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2006/11/12 16:27
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シャーロットの涙
2006/11/12 18:25
 「なぜそんなに怒っているのですか?」と、 トンマッコル(子どものように純粋な心)という名前の村の村長は言うのだ。  私にこのひと言が突き刺さる。  朝鮮戦争のさなか、国軍、人民軍、連合軍の兵士がそれぞれの事情で迷い込んだ 「トンマッコル」とい
don't worry!な毎日
2006/11/13 01:05
原題:Welcome to Dongmakgol 北から南から空から、死地を求めてトンマッコルへと兵士が集う。山奥のメルヘンチックなその村に一体何があるというの、子供のように純粋な心の住む村・・ 1950年、朝鮮半島を分断する戦いも米韓軍の仁川上陸によって終焉を
茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜
2006/11/16 23:09
 この映画の名前を見ると「マッコリ」を思い出すなぁ〜。なんて考えていたら、チケットを買う時に「トンマッコリへようこそ1枚」なんて言ってしまい恥ずかしい思いをしました。と言うわけで、トンマッコルへようこそを見てきました。
よしなしごと
2006/12/06 12:26
1950年代、朝鮮戦争中、戦争とはまるで無縁の山奥の平和な村トンマッコル。アメリカ人パイロットのスミス、韓国軍2人、人民軍の3人がそんな村へやってきて…。久石譲が音楽を担当したこの映画、あなたのご感想をどうぞ。
共通テーマ
2006/12/12 23:04
監督:パク・クァンヒョン 音楽:久石 譲 出演:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン、イム・ハリョン 評価:95点 公式サイト (ネタバレあります) 笑い、感動し、そして泣いた。 韓国で800万人の人が見たというが、十分に
デコ親父はいつも減量中
2007/03/10 16:25
カテゴリ : SF/ファンタジー 製作年 : 2005年 製作国 : 韓国 時間 : 132分 公開日 : 2006-10-28〜 監督 : パク・クァンヒョン 出演 : シン・ハギュン チョン・ジェヨン カン・ヘジョン 50年代、朝鮮戦争が続く中、戦争とはまるで無縁
サーカスな日々
2007/06/24 15:23
2005年の作品。記事後半でねたばれもしますよ。 たまには映画でも、と思って、久々に映画DVD借りてきました。 内容は、朝鮮戦争の最中、トンマッコルという不思議な村にやってきた南の兵士・北の兵士・アメリカ人兵士。最初は一触即発だったけど、村の空気に包
はなことば
2007/12/11 21:40
 『笑顔が一番つよいのです。』  コチラの「トンマッコルへようこそ」は、10/28公開になる韓国のハートウォーミングなコメディなんですが、久々にオンライン試写会が当たったので、観ちゃいましたぁ〜♪  あたしはやっぱり日本人だから、たくさんの北野監督作品
☆彡映画鑑賞日記☆彡