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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

@EX theater ROPPONGI B3階センター

もう何度か日本キャストで上演されているミュージカル、今回が初観劇でした。ライヴコンサートつき芝居という感じで、見応えあり聞き応えあり感じごたえありの2時間弱。念願の「本編内で聴くミッドナイトレディオ」。物語をすべて背負うところに登場するので、単独で聴くのと印象違いました。サントラ欲しいよう。

途方もなく重いものを抱えているのかもしれないと思う時点で、たぶんハンセルだったヘドウィグの経験してきたことは想像を遥かに絶するものなんじゃないだろうかと思います。でも、受け入れて欲しい部分が倦厭されたときの痛みとか(痛みという感覚に置き換えるのだって実際にはもっと筆舌に尽くしがたいような気がしている)、ベルリンの壁が崩壊したニュースを見て部屋で泣いたとき複雑な心境……寄る辺のなさとか疑問とか……たぶん似た感覚しか知れてないのだけれどとんでもなく胸に突き刺さってくるものがあるのです。とても個人的な部分を語っていたけれど、外を歩けば風当たりだって決して「アタシ」をウェルカムするようなものばかりではなかったと思うんです。実際にモノを切除してヘドウィグになったハンセルもそうだし、ラカージュに登場したおねえさまたちだって。すごくポジティブなエネルギーを感じるのがすごいのだけど、きっと部屋の中では血の止まらない心象の生傷の痛みに泣いてて、本当に言うように、笑っていないと泣いちゃうくらいギリギリのところで爪先立ちをしているんだろうなっていうきびしさを感じていました。術後の出血を生理の血だと例えたり、攻撃的な跳ね返しがめちゃくちゃ強いのもそう。昔語りでの皮肉たっぷりのベアグミの描写とかね。アウシュヴィッツの人いきれみたいに曇ってたとかそんな感じですごく尖った言い方してた気がする。

そんな心象の中にオアシスみたいにあるのが、どこかにいる(と信じている)切り離されたカタワレのお話。母親が酒気の狭間で気まぐれにこれを語らなかったらヘドウィグは存在しなかっただろうなという奇跡みたいなお話。アマプラドラマ「グッド・オーメンズ 」に夢中な私は作中の天使と悪魔にもこのお話が適応されてしまって大変な時間を過ごしたわけですが、とにかくこれがヘドウィグをどこかで支えてたに違いない。

そのカタワレをトミーだと見出すくだりがあったけれど、そしてあの最終盤は彼の中の音楽としての自分という姿に自己の欲求を昇華していったみたいに受け止めたのだけれど、実際のところはイツァークもそうだったというのもわかっていて、お話の図解みたいにぱっくりきれいに互いの自己は分離していなかった(男とか女とかいろんな側面を内包していた)のかなと。ヘドウィグはふたりのカタワレを合わせたカタワレのカタワレみたいな印象を受けたのでした。

浦井さんは見るたびに新境地開拓されてて、二度と同じ浦井さんを見たことがないのですが、ヘドウィグはまだやったことのなかったものの集大成みたいな存在でした。わたしには。いや単にわたしが見たことないだけかも知れませんが。淑やかで繊細でなよやかな所作も、観客を煽るチャーミングでアグレッシブな物言いも、中指を何本もおっ立ててベロをべろべろするのも、露骨な口淫・手淫の仕草も、ここまでずけずけだと清々しく気持ちが良くて、あと声も凄かったです。役柄の声の話をされるのを度々聞きますが、浦井さんの声だとはっきりする瞬間のほうが少ないことにびっくりしました。

なんやかんやきちんと寄り添い見守ってくれるイツァーク。アヴちゃん。「どろろ」の主題歌で始めてその歌声を聞いたのですが、この度もあの華奢な体のどこからあんな色とりどりな声が出てくるのか、もしかして喋る時しか声帯を使ってないんじゃないかくらいに見えます。黒く塗った眼窩の奥で白く光る目の鋭さや、イライラと神経質な様子を見せるの、痩せた野良猫みたいで触るのはやめたほうがいいけれど見守り続けないとしんでしまいそうなかんじ。ヘドウィグの膝枕に爪を立てながら、泣きながら眠っちゃった夜もあるんじゃないかな……。

まだプログラムを読んでいないのですが、あと100回くらいは見たい。
posted by Elie | MUSICAL | comments(0) | trackbacks(0) |
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