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「リンカーン」
 夜勤明けで見てきました。歴史の勉強は高校時代の定期試験対策のみで、この作品でもリンカーンといえばこの言葉、という台詞が登場するまで思い出せなかったくらいで、本当に恥ずかしい限りなのですが、知識がなくても台詞の妙…駆け引きと演説が面白く、とても150分もあったとは思えなかったし、ぐいぐい引き込まれました。

 役者の声が心地よいです。舌で仕事するひとの言葉は揺り籠のよう。リンカーンは演説上手だったそうですが、演説に限らず、知人に自分の思想を語るときの熱を帯びた言葉にも、その心地よい周波数が含まれていたようでした。きっとこういうひとは言葉選びも巧みで、先日観た「マイ・フェア・レディ」で教授が、ドゥーリトル親父の弁舌が立つのを“こいつにはレトリックの才能があるぞ!”というくらい、普通に話している(という設定の下)押韻が心地よく響くのです。大統領もまさにそんな感じでした。

 夢や理想を実現することは物凄いエネルギーがいると思うけれど、そこに向かうには“〜したい”ではなく“こうする”とか“こうあるべき”とかいう信念が推進力になっているのは間違いないこと。それが砂の城や机上の空論に終わらないのは、当人が純粋に真っ直ぐに進もうとするから、伴ってくるのでしょうね。その行進についてゆく人がいるのは、指導者たる前に等身大の部分や人望があるからなのだろうな、と感じるのです。やはり人間的な部分は魅力的。ユーモアとか愛情が素敵です。厳しい局面でも、ずっと厳しい顔をしているわけではなくて、必ず空気穴がある。ふとした笑顔であったり、冗談であったり、キリキリしっぱなしではないところが、いい。多くの方が書かれているように、この映画のリンカーンの素敵なところは、人間味(完全無欠の聖人君子ではないという面での)が露になっている点だと私も思います。何と言っても“私は合衆国の大統領だ、絶大な権力がある”と不足票を買うために立ち上がるところが、かっこいい。堪らない。

 あともうひとつ素敵だなと思うのは、御者?が最後に見た大統領の背中が、広くて頼もしくはないということ。ひとりの夫、ひとりの紳士である彼、というふうに描いたのが印象的でした。手袋を好まず、左記の場面でひょいと机に放り出してゆくのも、史実かもしれないけれど、遥か遠くやんごとなき世界に生きている異次元の人物ではなく、限りなく臣民に近いという象徴だなと感じるのです。偉業に触れると言うより、人柄に触れられる作品でした。もう一度見てもいい。

 ところで、見覚えがあると思ったら、最後に“明日返すよ、折るけどな”と修正案の原本を持って行ってしまう議員がトミー・リーおじでした。偏屈っぽくて、決して破顔しないけれど、妻の音読する修正案を聞きながら見せた表情がとても柔らかかったのが素敵でした。細かい点ではあったけれど、思想(の一部)を変えるとは、生半なことではないはず…それはどんな壁だったでしょう。それとも案外たやすかったでしょうか。
posted by Elie | MOVIE | comments(2) | trackbacks(5) |
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コメント
こんにちは。
おっしゃるとおり、一歩前進するために主張の一部を敢えて曲げるところが印象的でした。
本当に150分はあっという間でしたね。
2013/05/10 00:38 by ナドレック
ナドレックさま

コメントありがとうございます。
大きな一歩でしたよね。
あっという間なのに、伝記を一冊読んだ気分になるという。。。
2013/05/12 22:18 by Elie@管理人
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