早いもので、劇場公開からもう半年も経ってしまったのですね。首を長くして待っていたスウィーニーのDVDを、例によって特典Discから鑑賞しました。
■特典
やはり現場の貴重な映像は、見ていてワクワクしますね!製作途上のものがそこここに無造作に置かれている様子や、デジタル処理前の色味などが解るのも、博物館とか水族館で一般公開されていないブースを見学させて貰っているような気分になります。
一番気になっていた喉元を切り裂く仕掛けも明かされていて、とても興味深く見ました。血糊は幾つかのインタビューで語られている通り、本当に明るい色でしたね。血液っぽさはあまり感じさせない色味かと思いますが、あれだけの量が無秩序にぶちまけてあるとそれはそれでゾッとします。人間の血液量以上の血糊を1回のシーンで使ってしまうと言うのだから…うーむ、凄い。写実的にしすぎず、寧ろ寓話的になるようにこだわって作ったそうですが、それは尋常ならざる血糊の量にも表れているのかな。それがあのラストシーン、美しいと言う言葉はそぐわないのかも知れないけれど美しいと言う他ないあのシーンにも彩(!)を添えているのかも。メイキングブックには、ティム自らこの場面の2人の周りに血糊を注ぎ足す写真がありましたが、そういう絶妙な感覚ってとても凄い。少なすぎても嘘だし、多すぎてもくどいし、血糊の量だけに限った話ではありませんが、そこの所の微調整にプロフェッショナルの職人魂を見て感激します。
映画の特典Discとして不満だったのは、キャストインタビューや大道具小道具を紹介するセクションが少なかったことです。製作過程がミュージカルから映画に至るまでの変遷に留まってしまったのも、何となく中途半端な印象でした。スウィーニーのお話がどのように生まれて現在の形になったのかは、歴史的背景と合わせてとても勉強になったし、それを踏まえて本編を観たら、ジン(酒)が登場するのもごく自然な流れだと解りました。…それでもやはり、撮影の舞台裏をもっと見てみたかっただけに残念です。そういう分野に関しては、メイキングブックの方にたくさん書いてある気がしますね。グラン・ギニョールの話(ホラーは基本的に苦手なので少し苦痛でした;)を削って、役作りとか歌の稽古風景とかを見てみたかったし、ローラ・ミシェル・ケリーやジェイン・ワイズナーをもっと紹介して欲しかったです。
余談になりますが、2008年日生公演「ベガーズ・オペラ」のプログラム(p.36)に使われていた挿絵が登場したので気分が盛り上がりました。ベガーズの時代と100年ほどの開きはあるのものの、一部の劣悪な環境は大して変わっていないのかな。
■本編
感想は、
劇場鑑賞時にこれでもかとしたためたのでこちらでは省略いたしますが、今回新たに感じた何点かを書いておきます。
全体的に暗〜い色調なので仕方ないと言えば仕方ないのですが、スクリーンで観るのと違い、影になる部分は完全に真っ黒く見え、表情が解りづらかったです。。窓の外を見つめるスウィーニーの哀しい目は、逆にコントラストが利いて綺麗でしたけれどね。
特典の方で喉元バッサリの種明かしを見た後だったので、カメラのこちら側で必死にポンプを操作しているスタッフがいると思うと、凄惨な場面であるはずなのに不謹慎にもクスッと笑ってしまいました。
最後のトビーの表情に注目してみました。目の下の隈、剃刀を振るう瞬間の憎しみこもった顔。自分に良くしてくれたミセス・ラヴェットを奪ったスウィーニーへの復讐心からの行動だと考えるのが自然かな、と思ったのでそう仮定しますと、復讐は悪循環を繰り返すと言うことと、我が身を滅ぼすと言うことを強く感じますね。愚かで、恐ろしい話です。